メールマガジン第15号(平成18年7月)
◇目次

書籍紹介:『教育基本法はどこへ』
HPから:教育基本法改正案等
雑感

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6月18日に閉会した「第164回国会」では、教育基本法案は継続審議となりました。

今回は構成を変え、教育基本法に関して見ていきたいと思います。

なお、教育基本法改正に対する私の基本的なスタンスは「賛成」です。

どのような内容を盛り込むかについては、各案の条文に賛否はありますが、「現在及び未来に必要なことは、当然追加・変更していくべき」と考えています。

したがって、「どう変えるか」について意見の異なる方とは、私自身の考えを整理するためにも議論をしたいと思いますが、ただひたすら「改悪」と叫んで一切の変更を拒む方とは、議論をすること自体気が乗りません。

60年前に制定した法律が、現在も「100点満点」ということが果たして有りうるのでしょうか?

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●書籍紹介:『教育基本法はどこへ』 堀尾輝久著 有斐閣新書 ●
●  値段:700円(税別) 発行日:1986年3月30日      ●
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20年前の書籍ですが、大学時代に購入したものを改めて紐解いてみました。

私とは異なる見解が示されている書籍です。

それも、「どう変えるか」についての見解が異なるのではなく、「変えてはならない」という主張ですので、冒頭の言にしたがえば「議論をすること自体気が乗らない」書籍です。

そうはいっても、なぜ「変えるべきではない」のか、その主張を確認する意味で、読み直してみました。

なお、著者が衆議院の「教育基本法に関する特別委員会」で参考人として発言(本年6月7日)した際の議事録は、下記から見ることができます。

http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm

さて、読んでの感想を一言でいえば、やはり「納得できず」の一言でした。

問題意識として、部分的に共感できるところはあります。

例えば、

「押し付けられたものだから書き直すべきだというような、そんな単純な議論にはならない。私たちの”現在の選択の問題”として一人ひとりが考えるべき問題」

という問題設定は、全く同感です。

しかし、

「教育基本法の改正は、戦前の、天皇に忠義を尽くす人物を育てるという”忠君愛国”教育への回帰となる」

といった発想には、「随分と国民の判断力を低くみているんだな〜」という感想を私は受けます。

国民一人ひとりがこれだけの情報に接することができる現代において、そのような情報統制・強権社会が再来すると本当に考えているのでしょうか。

いかにも「弱者である国民のため」の意見であるかの体裁をとっていますが、私にとっては「国民一人ひとりの判断力を低くみなし、一部エリートが”正しい”方向へ導く責務がある」と言っているようにしか思えません。

もっとも、それが共産主義国家の現実ですね。


さて、他にも疑問を感じるところは多々あります。一部をとりあげると、

・「60年代以降の教育の質は(中略)、もっとダイレクトに経済と教育とが結びつく。(中略)つまり、財界が政界を支配する、そして政策を支配する」

現代(といっても20年前です)の教育政策の特徴を、「財界による教育支配」という視点で捉えています。資本主義を否定する常套句であり、今更とりあげる価値があるとは思いません。

しかし、あえてとりあげたのは、この書籍が私の大学時代、「教職をとるための必修授業のテキスト(参考図書だったかもしれません)」として使われていたからです。

この書籍のなかでも「学問の自由」「教育の自由」ということが頻繁に言われておりますが、教師を目指す学生(教職課程を受講する学生)への「推薦図書」として果たしてこの書籍が適切なのか。。。

改めて、寒気を感じました。


・「教育の改革論の系譜には、大きく二つの流れがあります。一つは、政府与党、そして経済界を中心にしたその改革論の系譜。もう一つは、民間からの改革論。その一つに日教組から委嘱された教育制度検討会、これが報告書を出しましたが、そういう、教育運動のなかから出てくる教育改革の系譜」

思わず目が点になった部分です。経済界と日教組を較べて、どのように考えれば日教組が「民間」になるんでしょうか???


・「第1条の”心身ともに健康な国民の育成を期して”というのは、例えば障害者に対しては差別的な規定になるのではないか、との問いですが、私は、この文言はもっと素直に親や自分の子どもたちや若い世代に何を期待するかという、その共通の願いがこめられているといっていいのではないかと思う」

この文章自体は良いのですが、他の文言にはひたすら「戦前の教育に対するこうした反省がある」と背景の説明を盛んにしているだけに、”随分といい加減だな〜”と感じました。


他にも、「競争の原理は、画一化をうながしこそすれ、個性化の原理とはなりえない」等、私としては反論のしどころが満載です。


改めて言うまでもなく、どのような主張を書籍でなさるのも言論の自由です。しかし、私が改めて読んで疑問を感じたのは、先にも書いたとおり、この書籍が、

「教師を目指す大学生が、必修授業のテキスト(推薦図書)として使わされていたこと」

です(私も教育実習へ行くために教職課程をとっていたので、その一人と言えます)。この書籍でも「教育への政治の介入」に対して大いなる警告を発しています(この点についての私見はいずれ触れたいと思います)が、それ以前の問題が厳然と横たわっていることを改めて実感しました。

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●HPから:教育基本法改正案等●
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先の通常国会では継続審議となりましたが、政府も民主党も、教育基本法案を世に問うています。

・政府提出法案

http://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/houan.htm

*このページからは、新旧法案の比較資料も掲載されています

・民主党提出法案

http://www.dpj.or.jp/seisaku/kan0312/monka/BOX_MKA0012.html

*こちらには、政府案も含めた比較資料が掲載されています

両案の特徴としては、

・幼児教育
・高等教育
・私立学校
・家庭教育
・地域教育
・障がい者教育
・教育振興計画の策定

といった項目が、新規に盛り込まれていることだと思います。

民主党案では、職業教育と情報教育も新たに盛り込まれています。

あくまで「基本法」ですので、どのような内容をどこまで盛り込むかは、それぞれ判断がわかれるとは思います。しかし、戦後の状況と現在では大きく世の中も変わっていますので、

・新たに必要なもの
・制定当時は当然のことであったが、現在においてはあえて言及する必要があるもの

は盛り込むべきではないかと私自身は思います。

教育基本法改正に関しては、「愛国心」をめぐる議論ばかりが取り上げられている感がありますが、全体を捉えた冷静な議論が必要だと思います。

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●雑感●
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メールマガジン第15号、いかがでしたでしょうか。
今回は「教育基本法」に焦点を当てました。

時折こうした形式でも自身の見解を述べていきたいと思います。

さて、区議会第二回定例会が、6月30日(金)に閉会しました。

今議会においては、一昨年の「住基ネット訴訟」以来2年ぶりに、継続審査となった議案がありました。

内容は「杉並芸術会館(旧高円寺会館)の指定管理者の指定」ですが、選定プロセスに問題あり、として継続審査となりました。

「区議会はただ賛成(反対)するだけ」と思われがちですが、そうではない一例にはなるかと思います。

また、近日中に第二回定例会の区政報告書をHPに掲載いたしますので、そちらもご覧いただければと思います(発送は本日行いました)。

http://homepage3.nifty.com/ikuma/sub7.htm


岩田いくま

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